なにする気分?

「ゲームしたい」「美味しいもの食べたい」「どっか行きたい」「ダラダラしたい」さて、なにしよう。

160度の高熱岩盤、ダイナマイトの自然発火事故、泡雪崩による宿舎崩壊。黒部第三発電所設立の裏側を描いたノンフィクション小説「高熱隧道」吉村昭



スポンサーリンク

f:id:kyoko1003:20171105213236j:plain

こんにちは、きょうこです。

先日こちらの記事でご紹介した黒部峡谷パノラマ展望ツアー。そのときツアーガイドの方にぜひ一度読んでみて欲しいと強くおすすめされたのが、吉村昭さんによる「高熱隧道(こうねつずいどう)」。
黒部第三発電所設立までの道のりを描いたノンフィクション小説です。

読んで分かったガイドさんがおすすめした意味。正直、読後しばらくは胸にずーんと重石がのったようで、感想があまり頭に思い浮かびませんでした。いまも綺麗にまとめられる自信はありません。

 

こんなことが実際にあったのか。
あまりにも過酷すぎるじゃないか。

 

国家プロジェクトとして進められた過酷な掘鑿工事。
工事前に入念に実施した調査ではその地質が隧道工事に適しているとの判定がされていたものの、いざ工事を進めてみると極めて高熱の断層が走っていたことが分かり、岩盤温度はぐんぐん上昇、最終的には摂氏160にまで至ります。

さらに掘鑿のために使用していたダイナマイトの使用制限温度は摂氏40
ダイナマイトの自然発火を予防するために様々な策が講じられはしたものの、もはや次元が違います。その結果発生したダイナマイトの自然発火事故。

 

また、冬は平均積雪量が5メートル、堆積した箇所では40メートルを超えることもある豪雪地帯の黒部。大規模な雪崩も頻発します。

そんな中、工事をスケジュール通りに進めるため冬も山に篭って掘り進める人夫たち。
ただ、ある晩泡雪崩(ほうなだれ)が発生し、寄宿舎ごと吹き飛ばされてしまうのです。

泡雪崩については本作で初めて知ったのですが、通常の雪崩よりも衝撃力が強く、この事件でも宿舎は一瞬にして吹き飛ばされ、山を超えたその先の大岩壁へ叩きつけられたとのこと。もちろんそこで寝泊まりしていた作業員は全員即死です。 

泡雪崩 - Wikipedia

 

そのような数々の事故・死者を前にし、若い技師の中には精神が壊れてしまう者もあらわれます。
本作で彼はこのプロジェクト・組織に馴染めなかった人間の末路として描かれていますが、それだけではこの胸の中に広がる嫌な感情は整理しきれません。
一企業の一社員に対する責務が重すぎて、当時はこのような状況がまかり通っていたのだと思うと、ただただ哀しいです。

 

多くの人命を犠牲にし、何度も中止の危機を乗り越え、プロジェクトは進みます。
貧しく、人間として同じ扱いがされていない人夫。命をかけて掘鑿工事を行う人夫たちと、それを指揮する技師たち。そんな中広がる人夫と技師の心の溝。
それは作中の一文一文からも人夫たちの静かな恨み・怒りが伝わってくるようで、最後の方は冷や汗をかいてしまうほど。

最終的に隧道は完成したものの、追われるように技師は山を降ったのでした。

 

黒部第三発電所建設工事は、昭和15年11月21日に完工。
全工区の犠牲者は300名以上。

 

この本を読んだ後では、黒部渓谷に対するイメージが大きく変わってしまいました。
ただの美しい景色、綺麗な風景で片付けられない過去。
いま黒部へ行ったら見える景色はきっと全く異なっていると思います。

黒部渓谷へ訪れる皆さんに、ぜひ一度手にしていただきたい一冊です。

 

高熱隧道 (新潮文庫)

高熱隧道 (新潮文庫) Kindle版

 

 

高熱隧道 (新潮文庫)

高熱隧道 (新潮文庫)

 

 

 

©なにする気分.com All rights reserved.